セルフコンパッションとは?検査で異常がない痛み・不調への向き合い方
セルフコンパッションとは?検査で異常がない痛み・不調への向き合い方

執筆者 作業療法士 丹野愛
監修者 整形外科医 森裕展
「検査では大きな問題は見つからない。それでも、痛みが残る、重だるさが続く。」
40代・50代になると、このような状態を経験することがあります。検査上は問題がないと言われると、「自分の我慢が足りないのではないか」「もっと頑張る必要があるのではないか」と自分を追い込んでしまう方も少なくありません。
仕事や家庭の役割が大きい時期ほど、体調の違和感は後回しになりやすく、気づかないうちに力が入り続けた状態が続きやすくなります。こうした不調は、構造的な異常として現れなくても、身体の反応が長く続くことで起きている可能性があります。
これまで心の健康は「自信を持つ」「気持ちで乗り切る」といった考え方で説明されることも少なくありませんでした。自分に課して乗り切るマインドの代わりとして近年注目されているのがセルフコンパッションという考え方です。
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自尊感情からセルフコンパッションへ

これまで心理学では自尊感情(自分に自信を持つこと)が精神的な安定を支え、心の健康に重要だと考えられてきました。しかし、研究が進むにつれ、自尊感情には弱点があることがわかってきました。自尊感情は「自分を良く評価できるか」に左右されるため、失敗や評価の低下が起こると大きく揺らぎます。その結果、次のような反応が起こりやすくなります。
・失敗への過度な不安
・完璧主義、過剰な努力
・自己批判が多くなる
・心身の緊張状態が続く
このように、心を守るためのはずの自信を保つ努力が、かえってストレス反応が持続するきっかけになってしまう場合があるとわかってきました。そこで定義された考え方がセルフコンパッション(self-compassion)です。
自分を高く評価することではなく、評価が下がる状況でもストレス反応が生じにくくなる考え方として研究されるようになりました。
関連記事:背中の痛み|自律神経失調症などの原因と対策・予防法を解説
セルフコンパッションとは

セルフコンパッション(Self-compassion)は、心理学者Kristin Neff博士により提唱された概念で、困難な状況にあるとき自分に思いやりを向ける態度を指します1)。
Kristin Neff博士は、セルフコンパッションが以下の3要素で構成されると定義しています1)。
・Self-kindness(自分への親切):つらいときに自分を責め続けるのではなく、思いやる態度をとること
・Common humanity(共通の人間性):苦しみや失敗を「自分だけの問題」と考えず、誰にでも起こる経験と捉えること
・Mindfulness(マインドフルネス):痛みや感情に飲み込まれず、起きている状態を落ち着いて認識すること
セルフコンパッションとは、失敗や不調のときに自分を評価し直す考え方ではありません。大切な人にかけるような言葉を自分にも向け、過剰な緊張が自足しないようにする態度を指します。
関連記事:【医師監修】自律神経と痛みの関係|慢性疼痛の軽減方法とは
セルフコンパッションと自律神経

セルフコンパッションはマインドとして提案された概念ですが、身体の反応との関係も研究されています。
自分に思いやりを向けるイメージ課題を行い、そのときの身体の変化を測定した研究では、心拍変動や唾液中のホルモン(コルチゾール)の数値の変化が観察されました2)。
心拍変動は自律神経活動の状態を評価する際に用いられる指標の一つです。コルチゾールはストレス刺激に応答して副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンです3)。
では、この反応の変化は日常の不調とどのように関係するのでしょうか。
慢性的な痛みや重だるさは、必ずしも組織の損傷だけで決まるわけではありません。自律神経活動が過剰な状態では、筋肉のこわばりや呼吸の浅さが続きやすく、検査では異常がないのに痛みや不調の自覚につながる場合もあります。反対にリラックスしている場合は同じ刺激であっても痛みなどが軽く感じられる場合もあります。
セルフコンパッションは、痛みや不調そのものを直接取り除く方法ではありません。しかし、自律神経活動や身体の反応が変化することによって、日常的な痛みや重だるさなどの不調が軽くなる可能性があります。
関連記事:【医師監修】自律神経が乱れる原因とは?3つのストレス対策を解説
ここまで読んで「これ、自分かも…?」「受診するべきなのかな?」と感じた方へ。
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セルフコンパッションの実践方法

Kristin Neff博士は、日常の中で行えるいくつかのシンプルなワークを紹介しています4)。
Self-Compassion Break(セルフコンパッション・ブレイク)
つらさを感じた瞬間に立ち止まり、短時間で行うワークです。
①「これはつらさを感じている瞬間だ」と気づきます。
②「こういうことは誰にでも起こる」と視野を広げます。
③「今の自分にできるだけやさしくしよう」と自分に言葉をかけます。
数十秒でもかまいません。
反射的に自分を責める前に、小さな「間」をつくる実践です。
Soothing Touch(スージング・タッチ)
身体にやさしく触れ、落ち着きを取り戻すための方法です。
胸に手を当てる、腕を軽く抱く、手で腕を包むなど、安心できる触れ方を選びます。
人前では腕を組むだけでもかまいません。
刺激を与えるのではなく、いたわるように触れることを意識します。
Self-Compassion Journal(セルフコンパッション・ジャーナル)
一日の終わりに行う「書く」ワークです。
・その日つらかったできごとを一つ選び、感じたことをありのままに書きます(Mindfulness)
・それが誰にでも起こり得る経験だと捉え直します(Common Humanity)
・親しい人にかけるような言葉を自分に向けます(Self-Kindness)
自分を責める思考に気づき、別の関わり方を試す練習になります。
Compassionate Body Scan(コンパッショネート・ボディスキャン)
自分の身体に思いやりを向けるワークです。
頭から足先まで順番に意識を向け、緊張や痛みがある場所を見つけます。
その部位を直すべき問題としてではなく、働き続けている部分として労わりながら注意を向けます。
ワークはいずれも数分で行うことができ、特別な道具も必要ありません。痛みをなくすことではなく、身体との向き合い方を変えることを目的とする実践方法です。
関連記事:【医師監修】自律神経の乱れや生活習慣をセルフチェック!慢性的な痛みや不調の原因も解説
不調が続くときは自分を思いやるセルフコンパッションの視点を

慢性的な不調には、身体の使い方だけでなく、呼吸や緊張状態、自分にどう向き合っているかという心の姿勢も深く関わっています。
森整形外科リハビリクリニックでは画像検査だけでなく、丁寧な問診や心身の評価を通じて、検査結果には反映されない不調の原因を一緒に探っていきます。「異常がない」と言われても続く不調こそ、丁寧な評価が必要です。頑張り続ける前に一度相談してみませんか。
関連記事:自律神経と呼吸の深い関係!浅い呼吸は要注意?呼吸筋ストレッチも紹介
治らない痛み(慢性疼痛)専門外来
痛みや違和感は、迷っているうちに長引くこともあります。
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ライター

監修者

参考
- 1)クリスティン・ネフ「自己への思いやり:自分に対する健全な態度の代替概念化」Self and Identity: 2003;2(2),85–101
- 2)Rockliff H, et al. 2008. 思いやりに焦点を当てたイメージに対する心拍変動と唾液コルチゾール反応のパイロット調査. 臨床神経精神医学. 2008.5(3)132-139
- 3)RM Sapolsky, LM Romero, AU Munck. グルココルチコイドはストレス反応にどのように影響するのか?許容作用、抑制作用、刺激作用、準備作用の統合。Endocr Rev.2000;21(1):55-89
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10696570/
- 4)クリスティン・ネフ著『セルフ・コンパッション:自分に優しくすることの証明された力』ウィリアム・モロー・ペーパーバックス、2015年

