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【医師監修】自律神経が乱れる原因とは?3つのストレス対策を解説

睡眠・ストレス・鬱病

自律神経が乱れる原因とは?3つのストレス対策を解説

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医 森裕展

自律神経は、呼吸や血圧、体温調整など、私たちの身体機能を無意識に支える重要な役割を担っています。しかし、生活リズムの乱れやストレス状態が続くと、自律神経の乱れが生じてさまざまな心身の不調を引き起こします。本記事では、自律神経の基本から乱れが起こる原因、自律神経とストレスとの関係、そして乱れを改善するためのストレス対策まで詳しく解説します。

自律神経の基本

神経は中枢神経と末梢神経に分けられます。自律神経は末梢神経の一つです。神経の分類と働きを解説します。

中枢神経と末梢神経の分類

中枢神経は脳と脊髄で構成され、全身から集まる情報をまとめて指令を出す神経です。
末梢神経は脳や脊髄から体のすみずみまで伸びており、中枢神経から発信された指令を身体の各部位に伝えています。体性神経である運動神経・感覚神経と、無意識下で生命維持のために働く自律神経に分けられます。

・運動神経:中枢神経からの指令を受けて全身の筋肉を動かす神経
・感覚神経:触覚、痛覚、温度覚、位置覚、振動覚などを中枢神経に伝える神経
・自律神経:呼吸・血圧・体温・内臓の機能などを無意識下で調整する神経

自律神経の種類と働き

自律神経は交感神経副交感神経があります。各器官に対して2つの神経が支配しており、一方の活動が活性化しているときはもう一方の活動が抑制される仕組みです。それぞれの神経線維から神経伝達物質を出して各器官を働かせています。

  • 交感神経:身体を緊張や攻撃などに対応した態勢をとるように働きます。神経伝達物質はアドレナリンとノルアドレナリンです。1)
  • 副交感神経休息やリラックスした状態になるように働きます。神経伝達物質はアセチルコリンです。1)

交感神経と副交感神経はそれぞれの身体の各器官に次のように働きます。

交感神経

器官

副交感神経

開く

瞳孔

縮まる

分泌を抑える

分泌を促す

分泌を抑える

唾液

分泌を促す

拡がる

気管支

縮まる

上昇

心臓の収縮力

低下

増加

心拍数

減少

収縮(血圧上昇)

末梢血管

拡張(血圧低下)

血管の収縮

胃液の分泌亢進

蠕動運動の低下

蠕動運動を促す

グリコーゲンの分解

肝臓

グリコーゲンの合成

排尿を抑える

膀胱

排尿を促す

収縮

皮膚・粘膜・内臓

 

拡張

骨格筋

 

亢進

発汗

 

1),2)

自律神経の乱れをセルフチェック

自律神経が乱れると次のような症状がみられる可能性があります。

  • ・めまいがする
  • ・頭痛や頭が重い感じがする
  • ・手足のしびれや痛みがある

    ・手足が冷える

  • ・肩がこる

  • ・息切れ・動悸がする

  • ・便秘や下痢、お腹の調子が悪い

  • ・胃の不調がある

  • ・疲れやすい

  • ・体がだるい

  • ・熱っぽい

  • ・身体や顔がほてる

  • ・眠れない

  • ・寝汗をかく

  • ・食欲低下

  • ・気持ち悪い

  • ・背中の痛み・腰痛

  • ・イライラする

  • ・不安感

3),4)

自律神経の乱れによってみられる症状は人によってもさまざまです。身体の症状のほか精神的な症状がみられる場合もあります。症状の程度はよくなったり悪くなったりを繰り返します4)

自律神経が乱れる原因

自律神経が乱れる原因として「ストレス」「生活リズムの乱れ」「ホルモン分泌の変化や病気」が考えられます。

ストレス

ストレスを受けたときは「戦闘・逃走」に備えるために交感神経が活性化した状態です。同時に副腎からはアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、さらに交感神経が活性化して自律神経のバランスは交感神経優位に傾きます。ストレスが継続的にかかると、交感神経優位の状態が続き、自律神経のバランスが乱れて心身にさまざまな不調を引き起こします。

生活リズムの乱れ

概日リズムは24時間より少し長い周期の体内時計と地球の1日周期である24時間とのずれを修正し、昼夜の変化に同調して体温調節、睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌を調整する重要な機能です。

睡眠不足や寝る前のデバイス使用が覚醒・睡眠のリズムに影響を及ぼし、自律神経のバランスが崩れて不調を引き起こします。5),6)不規則な食生活、運動不足、過度の飲酒や喫煙などの生活リズムの乱れは日常のストレスが引き金となって生じ、さらに、生活リズムの乱れがストレス反応を引き起こす悪循環に陥ります。7)

ホルモンバランスの変化や病気

卵巣で作られる女性ホルモンのエストロゲンが低下すると、自律神経の司令塔である視床下部の機能が乱れ、自律神経のバランスの崩れを引き起こします。女性ホルモンのバランスの変動がみられる更年期では自律神経の乱れによる症状がみられやすくなります。8)

また糖尿病や甲状腺機能障害も自律神経の乱れが起こる原因です。糖尿病の合併症である神経障害は高血糖状態が続くことで運動神経・感覚神経・自律神経が障害され、自律神経の乱れによる不調が起こります。9)甲状腺ホルモンは交感神経を刺激するので、甲状腺機能亢進症などにより、自律神経が影響を受け、自律神経の乱れで生じるのと同様の症状がみられます。10)

自律神経の乱れを整える3つのストレス対策

ストレスが長期間にわたってかかると、生活リズムの乱れやホルモンバランスの変化による症状にも悪影響を及ぼします。家庭や職場など、社会生活を送る上でストレスを完全になくすことはできませんが過度にためないコツは「ストレスのサインに気づく」「ストレスがかかりやすい状況を知る」「セルフケアを行う」です。11),12)

ストレスのサインに気づく

次のような症状がみられる場合はストレスがかかっているサインです。サインは身体・心・行動に現れます。

  • 【身体のサイン】
  • ・肩こり、腰痛、頭痛、腹痛などの痛みがある
  • ・寝つきが悪い、夜中や朝方に目覚めてしまうく
  • ・めまいや耳鳴りがある
  • ・下痢や便秘の症状がみられる
  • ・食欲がない、食べ過ぎる
  • ・嘔吐
  • ・悪寒によるふるえ
  • ・異常な発熱がみられる
  • 11),13)
  •  【心のサイン】
  • ・些細なことで驚く、急に泣き出す
  • ・気分が落ち込む、やる気が出ない
  • ・イライラする、怒りっぽくなる
  • ・人付き合いを面倒に感じる、人と会うことを避ける
  • ・集中力が低下した
  • ・短期記憶力や判断・決断力が低下した
  • ・思考力が低下した
  • 11),13)
  • 【行動のサイン】
  • ・泣く
  • ・引きこもる、孤立する
  • ・拒食・過食
  • ・怒りを爆発させる、けんかする
  • ・過激な行動に出る
  • ・吃音・チック症状が現れる
  • ・幼児返りする
  • 12)

ストレスがかかりやすい状況を知る

家庭や職場で次のようなできごとがあると、ストレスがかかりやすくなります。今の状況はストレスがかかりやすい状況かどうかをチェックしてみましょう。

  • ・引っ越しや近隣の騒音などの住環境が変化した
  • ・自分や家族の病気やケガ、災害にあった
  • ・こどもや夫婦間の人間関係に問題がある
  • ・収入が減った、ローンや借金などの金銭的な問題が生じた
  • ・仕事で失敗した、責任を負わされた
  • ・職場の人間関係のトラブルがある
  • ・配置転換、昇進などにより役割が変化した
  • ・仕事の量が多い、責任のある仕事を任された、勤務時間が変化した
  • など
  • 11)

セルフケアを行う

ストレスを緩和するセルフケア方法をお伝えします。

睡眠を十分にとる

一般的には7~8時間未満は睡眠不足とされますが、個人によって適切な睡眠時間や睡眠をとるタイミングなどは異なります。目覚ましなどに依存せずに起きて、日中に快適かつ集中して作業活動を行えるような睡眠が理想です。

  • 次のことを心がけましょう。
  • ・朝の光を浴びる
  • ・昼寝は20分以内
  • ・日中に運動する
  • ・朝食・昼食に食事を集約する
  • ・就寝30分前のデバイス使用は控える
  • ・午後のカフェイン摂取は避ける
  • ・就寝直前はリラックスする
  • 5)
運動する

しんどいときに無理に行う必要はありません。毎日20分を目安に爽快感が得られる運動を続けましょう。14)

自律神経を整える運動:https://www.moriseikei.or.jp/blog/jiritsushinkei_unndoubusoku/

リラックスする

気持ちに合わせてそのときに聴きたいと思う音楽を聴いたり、歌を歌ったりしてみましょう。また呼吸法や漸進的筋弛緩法はリラックス効果が得られます。14)

呼吸法・漸進的筋弛緩法の詳しい方法:https://www.moriseikei.or.jp/blog/jiritusinkei-itami/

自分の気持ちを吐き出す

抱えている気持ちを誰かに話したり、紙に書き出したりして言語化することで、自分の状況を客観視しやすくなり、新しい選択肢に気づけるきっかけが得られやすくなります。14)

できることに目を向ける

今の状況で自分ができていることに目を向けて今後どうなりたいかをイメージします。なりたい自分に向けて今できそうなことから始めてみましょう。14)

自律神経の乱れはストレスに気づいて適切なケアを

自律神経の乱れは生活リズムの乱れやストレス、病気などよって起こります。生活リズムは睡眠を十分にとり、覚醒・睡眠のリズムを維持するようにしましょう。ストレスへの対策は、まずはストレスがかかっている状況に気づくことが大切です。ストレスのサインやストレスのかかりやすい状況に当てはまっていないかをチェックし、運動やリラクセーションとともに自分の気持ちや今後の自分にも目を向けてみましょう。

執筆者

作業療法士 丹野 愛

監修者

参考