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咀嚼の効果と自律神経の関係とは?良く噛むための工夫も紹介

睡眠・ストレス・鬱病

咀嚼の効果と自律神経の関係とは?良く噛むための工夫も紹介

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医 森裕展

「マッサージを続けているけれど、なかなか痛みがスッキリしない」
「天気が悪い日やストレスを感じる時は、痛みが強くなる」

整形外科を受診される患者さんの中には、なかなか治らない痛みを抱えている方が少なくありません。こうした長引く痛みの背景には、痛む部位の状態だけでなく自律神経の乱れも深く関わっています。

身体が緊張して交感神経が優位になると、血流の悪化からさらなる痛みを招くという悪循環に陥りがちです。交感神経優位の状態をやわらげる身近な方法のひとつが咀嚼(そしゃく)です。

本記事では、咀嚼が自律神経に働きかける仕組みや、噛む回数を自然に増やすための工夫を詳しく解説します。食事時のセルフチェック項目も用意しましたので、自律神経のバランスを整える日々の習慣として活用してください。

咀嚼が自律神経を整えるメカニズム

「噛む」という動作は、一定のリズムで顎を動かす「リズム運動」のひとつです。

(Kamiya,2010)により、20分程度の継続的な咀嚼が、脳の腹側前頭前野(ふくそくぜんとうぜんや)という部位を活性化させることが明らかになりました。1)腹側前頭前野の活性化は、リラックスを司るセロトニン神経を刺激し、痛みの反応を抑制する働きを持っています。セロトニンは精神を安定させ、交感神経と副交感神経のバランスを調整する役割を担う脳内の神経伝達物質です。

さらに、咀嚼習慣について、「健康な方にガム咀嚼を1日3回(1回10分程度)2週間続けてもらったところ、噛まなかった方と比較して唾液中のS-IgA濃度が高まり、さらにはネガティブな気分や自律神経バランスも改善する」2)という報告もあります。
良く噛む習慣は痛みの感じ方をやわらげ、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

自律神経を整えるリズム運動についてはこちらの記事でも紹介しています。

良く噛むことのメリットとデメリット

良く噛むことは、健康づくりの一つとして注目されています。良く噛むことのメリットとデメリットをそれぞれ説明します。

良く噛むことのメリット

良く噛むことのメリットとして挙げられるのは次の点です。

・口の機能の発達
・唾液の分泌を促し消化を助ける
・肥満の予防
・睡眠の質の向上
・ストレスの軽減

良く噛むことは、歯や顎、舌、頬などをバランス良く使うことにつながり、食べ方の土台となる口腔機能を育てるとされています。厚生労働省は「ひとくち30回以上噛む」ことを目安とした「噛ミング30(カミングサンマル)」を提唱し、良く噛んで味わう食習慣の普及を推進してきました。3)

また、良く噛むことで食事のスピードが緩やかになり、満腹感を得やすくなるため、早食いや食べ過ぎの防止につながります。肥満予防4)の観点からも、日頃から良く噛む習慣を持つことは重要です。

さらに、咀嚼によって活性化されるセロトニンは、気分の安定やストレス反応の調整に関与する神経伝達物質であり、睡眠の質向上にも影響を与える可能性が示唆されています。セロトニンは脳内の睡眠スイッチを刺激して眠りを誘うほか、5)夜には睡眠ホルモン(メラトニン)の材料となって深い眠りをサポート6)します。

良く噛むことのデメリット

顎関節症などがある場合は、良く噛むことで顎関節に過度な負担をかけたり、首や肩の緊張を強めたりする場合があります。噛むと痛みがある場合は、無理に回数を増やそうとせず、歯科医師や主治医に相談しましょう。

  • 自律神経と睡眠の関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

良く噛む習慣のためのセルフチェック

食事の時、次のような食べ方をしていませんか?
チェックが多いほど、顎や身体に負担がかかる噛み方をしている可能性があります。

  • □ 食事を飲み物で流し込んでいることが多い
  • □ 食べ物を口に入れてから、10回以内に飲み込んでいる
  • □ 食事中、どちらか片方の歯ばかりで噛む癖がある
  • □ いつもテレビやスマホを見ながら「ながら食べ」をしている
  • □ 食事後、顎の疲れや肩の重さを感じることがある
  • □ 椅子に座ったとき、足の裏が床にしっかりついていない
  • □ 背もたれにもたれたまま食べている

座ったときに足の裏が床についていなかったり、背もたれにもたれたままだったりすると、安定した姿勢を保てません。姿勢が不安定だと、顎や首周りに余計な力が入りやすくなります。足の裏を床につけて骨盤が起きた状態で座ると、体幹が安定しやすくなり、首や肩の周りが過剰に緊張することなく、噛むための咀嚼筋も働きやすくなるでしょう。

強い力で噛みしめるのではなく、無理なく自然に咀嚼できるよう姿勢を整えて一口30回以上噛むことを意識するのが大切です。

自律神経のバランスの乱れが起きていないか、体と心のセルフチェックはこちらの記事でおこなえます。

自然に咀嚼回数が増える食事の工夫

良く噛むために、毎回噛む回数を意識するのは大変です。自然に咀嚼回数が増える食事の工夫を紹介します。

食材を大きめ・厚めにカットする

食材をあえて大きめや厚めに切ることで、飲み込むまでに必要な咀嚼の回数が自然と多くなります。

噛み応えのある食材を使う

れんこんやごぼうといった根菜類、きのこ類、玄米や雑穀米などの食物繊維が豊富な食材をメニューに取り入れましょう。無理なく咀嚼回数を増やせるようになります。

一口ごとに箸を置く

一度度箸を置くことで、次に食べるものを箸にとるまでの間、口の中の感覚に意識を向けやすくなり、一口ごとに味わう余裕も持ちやすくなるでしょう。

食間にスルメやガムを噛む

食事以外の時間にも噛む動作を取り入れやすくなります。強く噛みしめるのではなく、力を抜いて一定のリズムで噛むことを意識しましょう。

  • 自律神経に良い食べ物やメニューはこちらの記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

良く噛む習慣で自律神経のバランスを整えよう

慢性的な不調や痛みを抱えている方は、無意識に呼吸が浅くなり、全身が緊張していることがあります。不調を改善するためには、咀嚼というリズム運動が効果的です。20分程度の咀嚼を続けることで、セロトニンの分泌が促され、痛みの反応を抑え、乱れた自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

骨盤が起きた姿勢を保ち、大きめにカットした食材や噛み応えのある食材を、一口一口いつもより少し長く噛むよう意識することから始めてみましょう。毎日の食習慣が自律神経のバランスを整えることにつながります。仕事や作業の合間に、スルメやガムを噛むなどの習慣を取り入れるのもよいでしょう。

ただし、噛みしめすぎて顎や歯・歯ぐきに負担をかけすぎないように注意することも大切です。日々の生活習慣の見直しや運動をしても改善しない不調や痛みは専門的な知識と技術を持った医師やリハビリテーション専門職が在籍するクリニックに相談しましょう。

執筆者

作業療法士 丹野 愛

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