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長引く肩こりは自律神経が原因かも?マッサージで治らない理由と整形外科の選び方

長引く肩こりは自律神経が原因かも?マッサージで治らない理由と整形外科の選び方

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医 森裕展

「マッサージを受けても、すぐに元に戻ってしまう」
「朝起きた時から肩が重い」
「ストレスを感じると肩がガチガチになる」
このような頑固な肩こりに悩まされていませんか?

なかなか治らない肩こりは、自律神経のバランスの乱れが関わっているかもしれません。整形外科を受診される患者さんの中でも、肩こりは訴えの多い症状の一つです。マッサージをして筋肉をほぐすだけでは改善しないケースも多く見られます。

本記事では、自律神経が肩こりを引き起こすメカニズムと、マッサージだけでは改善が難しい理由、そして肩こりを軽減するためのアプローチについて解説します。

自律神経が肩こりを引き起こすメカニズム

自律神経は、私たちの意志とは関係なく身体の機能を調整している神経システムです。

Mouradら(2023)によると「自律神経系と痛みには関連があり、通常は痛みを感じると自律神経が適切に反応して痛みを和らげる一方、慢性的な肩こりでは自律神経の調整機能がうまく働かなくなり、痛みが長期化すると言われています。1)

Shiroら(2012)の研究では「慢性的な首・肩の痛みを抱える女性は健康な女性と比較して、筋肉に負荷をかけた際に活動する交感神経の反応が鈍くなっている」2)ことがわかりました。また、「健康な女性では運動後に筋肉の酸素供給が運動前の状態まで回復するのに対し、慢性的な痛みを抱える女性では、運動後も筋肉内の酸素供給が不足した状態が続く」2)ことが示されています。

これは、自律神経の調整機能がうまく働かないことで筋肉への血流と酸素供給が不十分になり、痛みが慢性化する一因となっていることを示唆しています。

関連記事:【医師監修】自律神経と痛みの関係|慢性疼痛の軽減方法とは

自律神経が関与する肩こりの特徴

自律神経の乱れが関与する肩こりは、単に肩の筋肉がこるといった局所的な問題にとどまらず、心身に多彩な不調を伴うことが特徴です。もし、肩こりのほかにも以下のような症状がみられる場合、その根本原因は自律神経にあるかもしれません。

全身症状を伴う

首の痛みやこりが全身の不調を伴う場合、その背景に自律神経の問題が隠れている可能性があります。Matsuiら(2021)の首の筋肉に問題を抱える患者1,226名を対象とした研究によって「多くの患者が頭痛、首のこり、めまい、動悸、目がチカチカする、吐き気、原因不明の熱、うつ症状といった8つの代表的な症状を併発している」3)と報告されています。

さらに「首への治療によって首のこりや全身症状が回復した患者では、自律神経機能の客観的な指標である瞳孔の直径も改善していた」3)ことが示されました。このことより、首の痛みやこりだけでなく全身症状も自律神経と関連していることが示唆されています。

朝起きた時から肩が重くてだるい

Shiroら(2012)の研究では「慢性的な首・肩の痛みを抱える人は、健康な人と比べて筋肉を使った後の酸素供給の回復が著しく遅い」2)ことが示されています。夜間睡眠中も交感神経が優位な状態が続くことで、筋肉は酸欠・疲労状態から回復できず、朝起きた時からの重さやだるさにつながると考えられます。

マッサージをしてもすぐに症状がぶり返す

マッサージは硬くなった筋肉をほぐし、一時的に血流を改善させるため、直後は楽に感じます。しかし、根本原因が自律神経の乱れにある場合、交感神経が優位になって肩の筋肉が緊張しやすい状態は解決できません。

Morikawaら(2017)の研究では「痛みの原因であるトリガーポイントを圧迫することで、痛みが和らぐと同時に交感神経の活動が抑えられ、副交感神経が活発になる」4)ことが確認されています。したがって、マッサージで筋肉だけをほぐしても、交感神経優位の状態に戻ってしまい、痛みやこりも再発してしまいます。

関連記事:自律神経と血流の関係とは?血流を改善する方法も解説

長引く肩こりを相談するときの整形外科の選び方

なかなか治らない頑固な肩こりは、筋肉の問題だけではなく、自律神経の不調が関わっている場合も少なくありません。そのため、局所的なマッサージや湿布、鎮痛剤、電気治療だけでは改善が難しい場合があります。根本的な改善を目指すためには、以下のような視点で整形外科を選んでみてはいかがでしょうか。

1. 首や肩だけでなく全身を診てくれる

肩こりや首のこりについて相談した際に、肩や首の症状だけではなく、頭痛、めまい、不眠、疲労感といった他の不調についても詳しく問診してくれるかは重要なポイントです。

痛みがある部分だけでなく、全身や心理的な側面からも多角的に診察してくれる医師は慢性的な痛みが全身の不調や自律神経のバランスも関与していることを理解している可能性が高いといえます。

2. 治療の選択肢が豊富にある

ホームページなどを確認し、自律神経や痛みの悪循環にアプローチできるような治療法を扱っているかを確認しましょう。

リハビリテーション、生活習慣指導やセルフケアのアドバイスなど、多様な選択肢があるクリニックは一人ひとりの状態に合わせた根本治療を目指していると考えられます。特に、理学療法士や作業療法士が在籍し、個別のリハビリテーションが充実しているかどうかは大きなポイントです。

痛みへのアプローチに力を入れている整形外科では、セラピストも痛みのメカニズムを理解し、根本原因の改善を目指すリハビリテーションを展開しているでしょう。

3. 慢性的な痛みや自律神経に関する情報発信をしているか

ホームページで「慢性疼痛(治らない痛み)」や「自律神経」といったキーワードに触れた情報発信をしているかを確認するのも一つの方法です。

痛みと自律神経の複雑な関係性を理解し、積極的に情報発信している整形外科では、マッサージや電気治療だけでは治りにくい頑固な痛みの症状に対して、より深い知見や複数のアプローチ方法を持っていると期待できます。

長引く肩こりは自律神経も視野に入れて根本的な改善を

長引く肩こりや、マッサージをしてもすぐにぶり返す症状は、単なる筋肉の緊張ではなく、自律神経の不調が深く関わっている可能性があります。

慢性的な痛みは交感神経を過剰に活動させ、筋肉の血流不足や酸欠状態を引き起こします。さらに、その影響は肩だけでなく、頭痛、めまい、疲労感といった全身の不調として現れることも少なくありません。この痛みの悪循環を断ち切るためには、筋肉をほぐすだけでなく、自律神経のバランスを整えるという視点が不可欠です。

もしセルフケアで改善が見られない場合や、全身の不調を伴う場合は、たかが肩こりと軽視せず、慢性的な痛みや自律神経の問題に理解のある整形外科で相談し、痛みの改善をめざしましょう。

関連記事:【医師監修】自律神経の乱れや生活習慣をセルフチェック!慢性的な痛みや不調の原因も解説

執筆者

作業療法士 丹野 愛

監修者

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